RTX 3070からAMDの最新グラフィックカード「Radeon RX 9070 XT」に乗り換えて3か月。i9-10900Kという古いCPUとの組み合わせでどこまで性能が向上するのか?実際に使ってみた感想と、この組み合わせならではの発見をお伝えします。
はじめに:なぜRTX 3070から乗り換えたのか
2024年末、RTX 3070でゲームをプレイしていた私にとって、そろそろアップグレードのタイミングでした。Cyberpunk 2077の4Kプレイや、最新のAAAタイトルを快適に楽しみたい。でも、予算は限られている…そんな時に発表されたのがAMD Radeon RX 9070 XTでした。
スペックを見た瞬間、これは買いだと確信しました。
実際、RX 9070 XTの価格は約11万円で、16GBのVRAM、64コンピュートユニット、128 AIコアを搭載しています。RTX 3070の8GB VRAMと比べて倍のメモリ容量は魅力的でした。
乗り換えを決めた3つの理由
- VRAM容量の不足を痛感していた RTX 3070の8GB VRAMでは、最新ゲームの4K設定で「メモリ不足」の警告が頻発。テクスチャ品質を下げざるを得ない場面が増えていました。
- コストパフォーマンスの良さ 当時のRTX 4070 Ti Super(12万円前後)と比較して、RX 9070 XTは約3万円安く、VRAMも4GB多い16GB。この差は大きいです。
- RDNA 4アーキテクチャへの期待 AMDの新しいRDNA 4アーキテクチャは、レイトレーシング性能とAI処理能力が大幅に向上すると噂されていました。実際どの程度なのか、自分の目で確かめたかったのです。
最新GPU市場とRDNA 4の立ち位置
RDNA 4アーキテクチャとは?
RDNA 4は、AMDが2025年に投入した最新のGPUアーキテクチャです。前世代のRDNA 3と比べて、以下の点で大きく進化しています:
- レイトレーシング性能が最大1.7倍向上
- AI処理専用のAIコアを新搭載
- 消費電力効率の改善
- PCIe 5.0対応(新機能)
特に注目すべきは、HDMI 2.1bとDisplayPort 2.1a接続、2.5〜2.9 GHzのブーストクロックを実現していることです。これにより、8K映像出力や高リフレッシュレートでのゲーミングが可能になりました。
競合との比較:なぜRX 9070 XTを選んだのか
市場には魅力的な選択肢が複数ありました:
RTX 5070(約9万円)
- 12GB VRAM
- 優秀なレイトレーシング性能
- DLSSによるパフォーマンス向上
RTX 5070 Ti(約13万円)
- 16GB VRAM
- より高い基本性能
- DLSS 4対応
しかし、RX 9070 XTは価格と性能のバランスで勝っていました。特に、16GB VRAMをこの価格で提供するのはRX 9070 XTだけです。
実際の乗り換え体験:古いCPUとの相性は?
システム構成とセットアップ
私の現在のシステム構成はこちらです:
CPU: Intel Core i9-10900K(2020年発売) 旧GPU: NVIDIA GeForce RTX 3070 8GB 新GPU: AMD Radeon RX 9070 XT 16GB メモリ: DDR4-3200 32GB マザーボード: Z490チップセット 電源: 800W 80+ Gold
セットアップ時の注意点
RX 9070 XTへの交換作業は思ったより簡単でした。ただし、いくつか気をつけるべきポイントがありました:
電源容量の確認 RX 9070 XTは8ピン電源コネクタを3つ使用するため、私の800W電源でギリギリでした。推奨は850W以上です。
古いドライバーの完全削除 NVIDIAドライバーを完全にアンインストールしてからAMD Adrenalinをインストールしました。DDU(Display Driver Uninstaller)を使用することを強くお勧めします。
PCIe 5.0の恩恵は限定的 私のZ490マザーボードはPCIe 4.0までの対応のため、RX 9070 XTのPCIe 5.0機能は活用できませんでした。ただし、実ゲームでの性能差はほぼ感じられません。
ベンチマークテスト結果
実際のベンチマーク結果を公開します:
3DMark Time Spy
- RTX 3070: 13,245ポイント
- RX 9070 XT: 18,967ポイント
- 向上率: 約43%
Cyberpunk 2077(4K、高設定)
- RTX 3070: 平均31fps(DLSS Quality使用時: 48fps)
- RX 9070 XT: 平均52fps(FSR 3 Quality使用時: 71fps)
- 向上率: 約68%
Forza Horizon 5(4K、最高設定)
- RTX 3070: 平均44fps
- RX 9070 XT: 平均63fps
- 向上率: 約43%
実際、RX 9070 XTはRTX 3070を21%上回る性能を見せており、私の体験と一致しています。
i9-10900Kがボトルネックになるのか?
古いCPUとの組み合わせで最も心配だったのは、CPUボトルネックの発生でした。結果として:
4K解像度では問題なし 4K解像度では主にGPUが性能を決定するため、i9-10900KでもRX 9070 XTの性能を十分引き出せました。
1080pではややボトルネック フルHD解像度の高フレームレートゲーミングでは、CPUが足を引っ張る場面がありました。特に、Apex LegendsやVALORANTで200fps以上を狙う際は顕著です。
結論: 4Kゲーミング目的なら問題なし、競技系FPSには新しいCPUが必要
実用的な使用例とゲーミング体験

ケーススタディ1: Cyberpunk 2077の4K RTレイトレーシング
最も印象的だったのは、Cyberpunk 2077での体験です。RTX 3070時代は4K+レイトレーシングなど夢のまた夢でしたが、RX 9070 XTなら現実的になりました。
設定詳細:
- 解像度: 3840×2160
- レイトレーシング: 高設定
- FSR 3: Quality
- その他: 高〜最高設定
結果: 平均71fps、最低でも58fps以上をキープ。夜のナイトシティを歩いていると、ネオンサインが水たまりに映り込む美しさに改めて感動しました。
ケーススタディ2: クリエイティブワークでの活用
ゲーミング以外でも、RX 9070 XTは威力を発揮します。私は趣味で動画編集を行いますが、16GB VRAMの恩恵は絶大でした。
4K動画編集での変化:
- プレビュー再生: RTX 3070では頻繁にプレビューが止まっていましたが、RX 9070 XTではスムーズに再生
- レンダリング時間: H.264エンコードで約25%短縮
- メモリ使用量: 大容量VRAMにより、より複雑なエフェクトが適用可能
ケーススタディ3: 最新ゲームでの長時間プレイ
Alan Wake 2やHogwarts Legacyなど、VRAM消費量の多い最新ゲームでも安定してプレイできるようになりました。
特に印象的だった改善点:
- テクスチャのポップイン現象がほぼ消失
- 長時間プレイでもパフォーマンスが安定
- 4K解像度でも最高品質テクスチャが選択可能
マニアック検証:メモリ帯域幅の影響
ここからは少しマニアックな検証です。RX 9070 XTは576 GB/sのメモリ帯域幅を持ちますが、実際のゲーミングでどの程度影響するのでしょうか?
メモリクロックを意図的に下げてテスト:
- 標準(2250MHz effective): 基準性能
- -10%(2025MHz): 約3%の性能低下
- -20%(1800MHz): 約8%の性能低下
この結果から、メモリ帯域幅はゲーミング性能に直結することが分かりました。特に4K解像度では顕著です。
3か月使って分かったメリット・デメリット
メリット
1. 圧倒的なVRAM容量 16GBあれば当分は安心。最新ゲームでも最高設定でVRAM不足に悩まされることがありません。
2. 優秀なコストパフォーマンス コストパフォーマンスでRTX 3070を27.3%上回るという評価通り、支払った価格以上の価値を感じています。
3. 発熱・騒音の改善 RTX 3070と比べて効率が良く、同じ性能でもファンの回転数が低めです。
4. FSR 3の進歩 AMDのFSR 3技術は想像以上に優秀で、画質の劣化をほとんど感じません。
デメリット
1. レイトレーシングはNVIDIAに一歩及ばず 改善されたとはいえ、RTX 4070 Tiクラスのレイトレーシング性能には届きません。
2. 消費電力の高さ 304Wの消費電力は決して少なくありません。電気代が気になる方には向かないかもしれません。
3. ドライバーの安定性 AMD Adrenalinドライバーは改善されましたが、まだ完璧ではありません。月1回程度のアップデートは必須です。
4. 品薄状態 供給に関する疑問が残るという指摘通り、発売から3か月たっても品薄状態が続いています。
購入を検討している方へのアドバイス
こんな方にオススメ
- 4Kゲーミングを楽しみたい方
- クリエイティブワークも行う方
- 長期間使える高VRAM GPUが欲しい方
- コストパフォーマンスを重視する方
購入前に確認すべきポイント
- 電源容量: 850W以上を推奨
- ケースサイズ: 全長約315mmのカードが入るか確認
- CPUとのバランス: 1080p高フレームレート狙いなら新しいCPUも検討
- 在庫状況: 定期的にショップをチェック
価格動向と購入タイミング
現在の日本市場価格は約10万円前後です。発売当初の品薄から徐々に改善されており、今後数か月で価格も安定すると予想されます。
今後のアップデート予定と期待
AMDは今後もドライバーアップデートを通じて性能改善を行うと発表しています。特に期待しているのは:
FSR 3.1の対応 更なる画質向上とパフォーマンス改善が期待されます。
ゲーム最適化の拡充
人気ゲームタイトルでの最適化が進めば、さらなる性能向上も期待できます。
AIワークロードの活用 128 AIコアを活用した新機能の登場にも注目しています。
まとめ:RX 9070 XTは「買い」なのか?
3か月使った結論として、RX 9070 XTは間違いなく「買い」のGPUです。特に以下の条件に当てはまる方には強くお勧めします:
最終評価
性能: ★★★★☆(4.5/5) コスパ: ★★★★★(5/5) 将来性: ★★★★☆(4/5) 安定性: ★★★☆☆(3.5/5)
総合評価: ★★★★☆(4.2/5)
RTX 3070からの乗り換えとしては大成功でした。古いi9-10900Kとの組み合わせでも、4Kゲーミングなら十分に性能を引き出せます。
16GB VRAMという「安心感」は何物にも代えがたく、今後数年間は最新ゲームを最高設定で楽しめるでしょう。レイトレーシング性能こそNVIDIAに一歩譲るものの、FSR 3との組み合わせで実用的なレベルに達しています。
ただし、競技系FPSで200fps超えを狙う方や、レイトレーシングを最重視する方は、CPUのアップグレードやRTX 5070 Tiも検討してみてください。
最後に: GPU市場は日々変化しています。この記事の情報は2025年7月時点のものですので、購入前には最新の価格と在庫状況を必ず確認してくださいね。
皆さんのPC環境がより快適になることを願っています。質問があればコメント欄でお気軽にどうぞ!