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PCアップグレード前にやるべき4つの準備と失敗しないための完全ガイド

パソコンの調子が悪くなってきたとき、あるいはもっと快適に作業したいと思ったとき、多くの人が「そろそろ買い替え時かな」と考えます。でも、いざアップグレードしようと思っても、何から手をつければいいのか分からない。大切なデータは大丈夫だろうか。新しいパーツは本当に今のPCに合うのだろうか——。そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

実は私も最近、愛用していたノートパソコンが突然起動しなくなるという経験をしました。必死にトラブルシューティングを試みましたが復旧せず、結局新しいマシンを購入することに。幸いにも重要なファイルはクラウドと外付けSSDにバックアップしていたため、大きな損失は免れましたが、もし準備していなかったらと思うとゾッとします。

この記事では、私の経験と最新の知見を踏まえて、PCをアップグレードする前に必ず行うべき4つの準備について詳しく解説します。初心者の方でも分かりやすく、そして中級者以上の方にも役立つ情報を盛り込んでいますので、ぜひ最後までお読みください。

PCアップグレード前に行うべき4つの重要な準備

1. 重要なファイルを複数の場所にバックアップする

バックアップは「多重化」が鉄則

PCのアップグレードや買い替えで最も恐ろしいのは、大切なデータを失うことです。家族の写真、仕事の資料、税務書類、趣味で作った作品——これらを一瞬で失ってしまうリスクは、想像以上に高いのです。

私の場合、以前は「まあ大丈夫だろう」と楽観視していましたが、友人がハードディスクのクラッシュで10年分の写真を失った話を聞いて考えを改めました。それ以来、「3-2-1ルール」を実践しています。

バックアップの3-2-1ルール

  • 3つのコピーを持つ(オリジナル + バックアップ2つ)
  • 2種類の異なるメディアに保存する(例:クラウド + 外付けSSD)
  • 1つは別の場所に保管する(クラウドや実家など)

クラウドストレージの活用法

クラウドストレージは、PCが物理的に壊れても、火事や盗難に遭ってもデータを守れる最強の保険です。主要なサービスを比較してみましょう。

主要クラウドサービスの比較(2025年現在)

  • Google Drive:無料15GB、100GBプラン月額250円
  • Microsoft OneDrive:無料5GB、100GBプラン月額224円、Microsoft 365 Personalで1TB(年間約15,000円)
  • iCloud Drive:無料5GB、50GBプラン月額130円、200GBプラン月額400円
  • Dropbox:無料2GB、2TBプラン月額1,500円

WindowsユーザーにはOneDriveが最適です。Windows 11に標準搭載されており、自動バックアップ機能も充実しています。Microsoft 365に加入すれば、1TBの容量とOfficeアプリも使えて一石二鳥です。

MacユーザーならiCloud Driveが seamless に連携します。iPhoneやiPadとも自動同期するため、デバイス間のデータ移行がスムーズです。

外付けSSDの選び方

クラウドだけでは不安という方、あるいは月額料金を払いたくない方には、外付けSSDがおすすめです。現在、2TBのポータブルSSDは約20,000〜25,000円で購入できます。一度の投資で済むため、長期的にはコストパフォーマンスに優れています。

外付けSSD選びのポイント

  • 容量:現在のデータ量の2倍以上が理想
  • 転送速度:USB 3.2 Gen 2以上(10Gbps)を推奨
  • 耐久性:IP67等級の防水防塵モデルなら安心
  • ブランド:Samsung、SanDisk、Crucialなどの信頼性の高いメーカーを選ぶ

私が使っているのはSamsung T7 Shieldの2TBモデルで、約22,000円で購入しました。転送速度は最大1,050MB/sと高速で、IP65の防水防塵性能も備えています。落下耐性も3mまで対応しているため、持ち運びも安心です。

2. ハードウェアの仕様と互換性を徹底的に調べる

「買ってから合わなかった」では遅い

PCのパーツを新調する際、最も避けたいのが互換性の問題です。特に自作PCやパーツ交換を考えている方は、この工程を絶対に省略してはいけません。

自作PC・パーツ交換で確認すべき互換性

マザーボードとCPU マザーボードには対応するCPUソケットが決まっています。例えば、Intel第14世代CPUはLGA1700ソケット、AMD Ryzen 7000シリーズはAM5ソケットです。世代が異なると物理的に取り付けられないため、必ず確認しましょう。

メモリ(RAM)の規格 DDR4とDDR5は互換性がありません。最新のマザーボードの多くはDDR5対応ですが、一部のエントリーモデルはDDR4のままです。また、メモリの動作クロックもマザーボードの仕様に合わせる必要があります。

電源ユニット(PSU)の容量 これは意外と見落としがちなポイントです。例えば、NVIDIA RTX 5070 Tiを搭載する場合、最低750Wの電源が必要です。ハイエンドCPU(Intel Core i9やAMD Ryzen 9)と組み合わせるなら、850W〜1,000Wクラスを選ぶべきでしょう。

電源容量の計算には、「PCPartPicker」や「OuterVision Power Supply Calculator」などのオンラインツールが便利です。各パーツの消費電力を入力すると、必要な電源容量を自動計算してくれます。

グラフィックカードの物理サイズ 最新のハイエンドGPUは驚くほど大型化しています。RTX 4090は全長約336mm、3スロット占有というモンスターサイズ。小型のPCケースでは物理的に入らないこともあるため、ケースの対応サイズを必ず確認してください。

完成品PC購入時のチェックポイント

完成品のPCを購入する場合も、油断は禁物です。

現在のニーズ + 2〜3年先を見据える 今使っているアプリが動けばいい、という考えは危険です。ソフトウェアは日々進化しており、特に動画編集やAI関連のアプリは要求スペックが急速に上がっています。

例えば、Adobe Premiere Proの最新版は、4K動画編集に16GB以上のRAM、8K編集には32GB以上を推奨しています。今は1080pの編集しかしていなくても、将来4Kに移行する可能性を考えると、余裕を持ったスペックを選ぶべきです。

ノートPCのアップグレード可能性 多くのノートPCは、RAMやストレージ以外のアップグレードができません。特に最近のMacBookやウルトラブックは、メモリがマザーボードに直付けされており、後から増設不可能です。購入時点で将来必要になりそうな最大スペックを選んでおくことが重要です。

チップセットの違いを理解する

マザーボードを選ぶ際、「B760」や「X670E」といったチップセットの型番を目にします。これは単なる型番ではなく、機能性に大きく影響します。

Intelの場合:

  • Z790:オーバークロック対応、PCIe 5.0対応、高価
  • B760:オーバークロック非対応、コストパフォーマンス重視
  • H770:中間的な位置づけ

AMDの場合:

  • X670E:最上位、PCIe 5.0フル対応
  • B650E:コスパ重視、PCIe 5.0対応(一部)
  • A620:エントリーモデル、基本機能のみ

オーバークロックをしない、最新規格にこだわらないなら、B760やB650Eで十分です。私も現在B650Eのマザーボードを使っていますが、日常使用で不満を感じたことはありません。

3. ハードウェアとソフトウェア、作業環境を整理する

整理整頓が成功の鍵

アップグレード作業を始める前に、デジタル環境と物理環境の両方を整えることで、作業効率が格段に上がります。

ソフトウェアの準備

Windowsアップデートの完全適用 アップグレード前に、すべてのWindowsアップデートを適用しておきましょう。Microsoftは常にハードウェアサポートを拡張し、互換性問題を修正しています。特にチップセットドライバーやUSBドライバーは重要です。

「設定」→「Windows Update」→「詳細オプション」から、「オプションの更新プログラム」も確認してください。サードパーティ製のドライバーもここから入手できます。

グラフィックドライバーの扱い 新しいグラフィックカードに交換する場合は、既存のグラフィックドライバーを完全にアンインストールすることを強く推奨します。NVIDIAからAMDへ、あるいはその逆の場合は特に重要です。

ドライバーのクリーンアンインストールには「DDU(Display Driver Uninstaller)」という無料ツールが便利です。セーフモードで起動し、完全にドライバーを削除できます。

  1. DDUをダウンロードして解凍
  2. Windowsをセーフモードで起動
  3. DDUを実行し、該当するGPUメーカーを選択
  4. 「クリーンアンインストールして再起動」を実行
  5. 通常モードで起動後、新しいドライバーをインストール

不要なアプリの整理 この機会に、使っていないアプリを思い切ってアンインストールしましょう。ストレージ容量を節約できるだけでなく、バックアップ時間の短縮、システムの安定性向上にもつながります。

「設定」→「アプリ」→「インストールされているアプリ」から、起動日順に並べ替えると、長期間使っていないアプリが一目瞭然です。私はこの方法で、50GB以上のストレージを解放できました。

物理的な作業環境の整備

デスク周りの清掃 PCケースを開ける場合、埃やゴミが内部に侵入するリスクが高まります。作業前にデスク周りを徹底的に清掃しましょう。

清掃のチェックリスト

  • デスク表面を拭き掃除
  • 床に掃除機をかける
  • エアダスターでキーボードやPCケースの埃を除去
  • 作業スペースに不要なものを置かない

静電気対策 PCパーツは静電気に非常に敏感です。特に冬場の乾燥した環境では、人体に数千ボルトの静電気が蓄積されることがあります。

静電気対策の基本

  • 作業前に金属製の水道の蛇口などに触れて放電
  • 可能であれば静電気防止リストストラップを使用(約800円〜)
  • カーペットの上での作業は避ける
  • 化学繊維の服装は避け、綿素材を選ぶ

静電気防止マットは3,000円程度で購入できますが、定期的にパーツ交換をしないなら必須ではありません。私は最初の自作PCでは使いましたが、現在は金属部分への接触で放電する方法で問題なく作業しています。

4. 新しい知識を学ぶ

正しい使い方を知らないと、宝の持ち腐れ

せっかく高性能なPCを手に入れても、正しく使えなければ性能を発揮できないばかりか、早期故障の原因にもなります。

ディスプレイタイプ別の注意点

OLEDディスプレイの焼き付き対策 最近のハイエンドノートPCには、OLED(有機EL)ディスプレイが採用されています。発色が鮮やかで黒が美しいOLEDですが、焼き付きのリスクがあります。

同じ画像を長時間表示し続けると、その部分のピクセルが劣化し、画面を切り替えても残像が残ってしまうのです。特にタスクバーやアプリのツールバーなど、常に表示されている要素が焼き付きやすいです。

OLED搭載PCの設定

  • ディスプレイの電源を2〜3分で切るように設定
  • スクリーンセーバーを有効化
  • タスクバーを自動的に隠す設定にする
  • ダークモードを使用して明るい静止画像を減らす
  • 長時間同じ作業をする場合は定期的に画面を切り替える

私が使っているASUS Zenbook OLED では、Windowsの電源設定で「ディスプレイの電源を切る」を2分に設定し、タスクバーも自動で隠すようにしています。購入から1年以上経ちますが、焼き付きは一切見られません。

液晶ディスプレイの輝度管理 IPS液晶やVA液晶の場合は焼き付きの心配はありませんが、輝度を常に最大にしておくとバックライトの寿命が短くなります。室内照明に合わせて適切な輝度に調整しましょう。

Windows 11では「設定」→「システム」→「ディスプレイ」から「照明が変化したときに明るさを自動的に調整する」をオンにすると便利です。

冷却システムの理解

空冷と水冷の違い ゲーミングPCやワークステーションを購入・自作する際、CPUクーラーの選択は重要です。

空冷クーラー

  • メリット:メンテナンスフリー、故障リスクが低い、コスパ良好
  • デメリット:大型になりがち、冷却性能に限界がある

簡易水冷(AIO)

  • メリット:高い冷却性能、見た目がスッキリ
  • デメリット:価格が高い、ポンプ故障のリスク、5〜7年で交換が必要

一般的な使用なら空冷で十分です。Noctua NH-D15やDeepCool AK620のような高性能空冷クーラーは、簡易水冷に匹敵する冷却性能を持っています。

私は以前、見た目の良さに惹かれて簡易水冷を導入しましたが、3年目にポンプから異音が出始め、結局空冷に戻しました。今はNoctua NH-U12Sを使っていますが、静かで安定しており、大変満足しています。

ストレージの最適化

SSDの寿命を延ばす設定 SSDは書き込み回数に寿命があります。TBW(Total Bytes Written)という指標で表され、例えば500TBWなら、理論上500TBのデータを書き込むと寿命を迎えます。

SSDを長持ちさせるコツ

  • Windowsの「高速スタートアップ」を無効化(不要な書き込みを削減)
  • ページファイルを最小限に設定(RAMが16GB以上ある場合)
  • 一時ファイルを別ドライブに移動
  • 定期的なTRIMコマンドの実行(Windows 11では自動)

ただし、最近のSSDは非常に耐久性が高く、通常の使用で寿命を迎えることはまずありません。Samsung 970 EVOのような一般的なSSDでも、600TBW以上の耐久性があり、1日20GBの書き込みでも80年以上持つ計算です。

情報収集の方法と注意点

信頼できる情報源を見極める

PCのアップグレードに関する情報は、インターネット上に溢れています。しかし、その中には古い情報や誤った情報も少なくありません。

信頼できる情報源

メーカー公式サイト 最も確実なのは、各メーカーの公式サイトです。仕様、互換性、推奨設定などが正確に記載されています。

技術系コミュニティ

  • Reddit:r/buildapc、r/pcmasterraceなどのサブレディット
  • 価格.com:レビューと口コミ情報
  • Kakaku.com:実際の使用者の生の声

YouTubeチャンネル

  • Linus Tech Tips(英語)
  • JayzTwoCents(英語)
  • 吉田製作所(日本語)
  • PC Watch(日本語)

情報を鵜呑みにしない姿勢

販売員の助言は参考程度に 家電量販店の販売員は親切ですが、必ずしも専門知識が豊富とは限りません。また、在庫処分や利益率の高い商品を勧めてくる場合もあります。

オーバースペックの罠 「将来のために最高スペックを」という助言は、一見正しく聞こえますが、必ずしも最善とは限りません。PCの性能向上は年々加速しており、5年後には現在の最高スペックも陳腐化している可能性が高いからです。

予算に余裕があるなら、最高スペックを買うより、ミドルスペックを3〜4年ごとに買い替える方が、常に最新の技術を使えてコストパフォーマンスも良い場合があります。

ベンチマークスコアの正しい読み方

PCの性能を数値化した「ベンチマークスコア」は便利ですが、絶対的な指標ではありません。

例えば、3DMarkのスコアはゲーミング性能を測るには適していますが、動画編集の性能は測れません。Cinebench R23はCPUのレンダリング性能を測りますが、実際のアプリでの体感速度とは必ずしも一致しません。

重要なのは、自分が使うアプリでのベンチマークを参考にすることです。Adobe Premiere Proを使うなら「Puget Systems Benchmark」、Blenderを使うなら「Blender Benchmark」といった、アプリ固有のベンチマークが参考になります。

私がRyzen 9 7950Xを選んだ理由も、Blenderでのレンダリング速度が前世代から30%以上向上していたからです。ゲーミング性能ではIntel Core i9-14900Kに劣る場合もありますが、私の用途には完璧にマッチしています。

アップグレード後のチェックリスト

実際にアップグレードを完了した後も、確認すべきポイントがあります。

システムの安定性確認

ストレステストの実施 新しいパーツが正常に動作するか、以下のツールで確認しましょう。

  • CPU:Cinebench R23を30分実行
  • GPU:3DMarkまたはFurMarkを実行
  • メモリ:MemTest86を最低1パス実行
  • ストレージ:CrystalDiskMarkで速度測定

エラーが出たり、異常に高温になる場合は、取り付けに問題がある可能性があります。

温度モニタリング

適正温度の範囲

  • CPU:アイドル時30〜50℃、負荷時60〜85℃
  • GPU:アイドル時30〜50℃、負荷時60〜85℃
  • SSD:50〜70℃

これらを超える場合は、冷却が不十分かもしれません。ケース内のエアフローを改善したり、CPUクーラーの取り付けを確認しましょう。

私が愛用している温度モニタリングツールは「HWiNFO64」です。リアルタイムで各コンポーネントの温度、クロック、電圧を表示してくれます。初回起動時は表示項目が多くて戸惑いますが、必要な項目だけ選んで表示できるので、慣れれば非常に便利です。

ドライバーとファームウェアの最新化

アップグレード完了後、すべてのドライバーを最新版に更新しましょう。

更新すべきドライバー

  • チップセットドライバー(Intelの場合はIntel Driver & Support Assistant、AMDの場合はAMD Chipset Drivers)
  • グラフィックドライバー(GeForce ExperienceまたはAMD Software)
  • LANドライバー
  • オーディオドライバー

Windows Updateだけでは最新版が入らないことも多いため、メーカーサイトから直接ダウンロードすることをお勧めします。

まとめ:準備万端でスムーズなアップグレードを

PCのアップグレードは、適切な準備さえすれば決して難しいものではありません。この記事で紹介した4つの準備——バックアップ、互換性確認、環境整備、ベストプラクティスの学習——を実行すれば、トラブルのリスクを大幅に減らせます。

特にバックアップは、アップグレードの成否に関わらず、日頃から習慣化すべきです。私自身、突然のPC故障で痛い目に遭ったからこそ、今ではクラウドと外付けSSDの両方にバックアップを取るようになりました。

また、互換性の確認を怠ると、せっかく購入したパーツが使えないという悲劇を招きます。特に自作PCやパーツ交換を考えている方は、PCPartPickerのような互換性チェックツールを積極的に活用してください。

情報収集も重要ですが、すべてを鵜呑みにせず、複数の情報源を参照して判断することが大切です。メーカー公式情報、技術系コミュニティ、YouTubeのレビュー動画などを総合的に見て、自分に最適な選択をしましょう。

最後に、アップグレードは必ずしも「最新・最高スペック」を目指す必要はありません。自分の用途に合った、コストパフォーマンスの良い選択こそが、長期的な満足度につながります。

この記事が、あなたのPCアップグレードを成功に導く一助となれば幸いです。快適なPCライフをお楽しみください!