「VPNは絶対に必要!」そんな声をポッドキャストやYouTubeで何度聞いたことでしょう。確かに、VPN(仮想プライベートネットワーク)には魅力的なメリットがたくさんあります。プライバシー保護、地域制限の回避、セキュリティ強化…技術系メディアでもVPNを推奨する記事は数え切れないほど存在します。

しかし、私自身が2年以上VPNを使い続けた結果、ある結論に達しました。「今の自分には、VPNの不便さを我慢するより、別の方法を探した方が合理的だ」と。

以前は海外のテクノロジー製品を調査するためにVPNを頻繁に活用していました。でも実際に使い込んでいくうちに、広告で語られない「VPNの現実」が次々と見えてきたんです。この記事では、私が実際にVPNサブスクリプションを解約するに至った4つの理由を、体験談を交えながら詳しくお伝えします。

VPN加入を検討している方にとって、この「裏側の話」は契約前に知っておくべき重要な情報になるはずです。

理由1:オンラインゲームとVPNは相性最悪だった

VPNの仕組みが生む避けられない「ラグ」

まず、VPNの基本的な仕組みを簡単に説明しましょう。VPNは、あなたのインターネット通信を1つ以上の遠隔サーバーを経由させることで機能します。これは例えるなら、目的地に向かう際に「わざと遠回りのルート」を通るようなもの。この遠回りによって、以下のようなメリットが生まれます。

  • セキュアな通信トンネルの構築
  • 実際の位置情報の隠蔽
  • 地域制限されたコンテンツへのアクセス
  • IPアドレスの匿名化

しかし、この「遠回り」には必ず代償が伴います。それがレイテンシ(遅延)の増加です。

ゲーマーにとって致命的な50ミリ秒の差

動画を見たり音楽を聴いたりする分には、数十ミリ秒の遅延はほとんど気になりません。でも、オンラインシューティングゲームではどうでしょう? 私が実際に『Apex Legends』をVPN接続でプレイしたとき、普段なら20ミリ秒程度のPingが70ミリ秒以上に跳ね上がりました。

この50ミリ秒の差が、ゲーム内では以下のような影響を及ぼしました。

  • ヘッドショットのタイミングがズレる:相手の頭を狙った瞬間には、すでに相手が移動済み
  • 被弾判定の遅れ:カバーに隠れたのに撃たれる「ラグ死」が頻発
  • 精密な操作の困難さ:ジャンプやスライディングのタイミングがシビアなゲームでは致命的

プラットフォームゲームのような、精密なタイミングが求められるジャンルでも同様です。ジャンプの入力が遅れてギリギリで飛べず、落下死してしまう…そんな経験を何度もしました。

ゲーム以外でも実感する「リアルタイム性」の喪失

実は、ラグの影響はゲームだけに留まりません。

ビデオ通話の違和感 ZoomやGoogle Meetでのオンライン会議中、VPNをオンにしていると微妙な遅延が発生します。相手の発言が終わったと思って話し始めたら、まだ話していた…というぎこちない展開が何度も。この「数百ミリ秒」の遅延が、自然な会話のリズムを確実に壊します。

リモートデスクトップの操作性低下 仕事で社内サーバーにリモート接続する際、VPN経由だとマウスカーソルの動きに明らかなラグを感じました。細かい作業をしようとすると、この遅延がストレスになります。

結論として、リアルタイム性が求められるあらゆる活動において、VPNは本質的に不向きなんです。もちろん、VPNを一時的にオフにすることもできますが、頻繁にゲームをプレイしたりビデオ通話をする人にとっては、そのたびに切り替える作業自体が面倒になってきます。

理由2:一部のアプリやサービスで予期せぬ問題が続出

位置情報の変更が引き起こす「混乱」

海外の製品情報を調べる私にとって、VPNで地域を切り替える機能は当初とても便利でした。ウェブサイトの多くは、アクセス元のIPアドレスに応じて以下のような情報を変えて表示するからです。

  • 商品の販売価格
  • 利用可能な商品ラインナップ
  • 表示される広告内容
  • デフォルト言語や通貨

例えば、アメリカのAmazonサイトを日本から見ると、一部商品は「この地域には配送できません」と表示されます。でもVPNでアメリカのサーバー経由でアクセスすれば、現地の人が見ているのと同じ情報が手に入ります。

しかし、この「便利さ」には大きな落とし穴がありました。

銀行アプリがログインをブロック

最も困ったのは、金融関連のアプリやウェブサイトがVPN接続を検知してブロックすることです。ある日、VPNをオンにしたままネットバンキングにログインしようとしたところ、「不審なアクセスを検知しました」というエラーメッセージが表示され、アクセスを拒否されました。

さらに深刻なケースでは、急にアカウントが一時的にロックされたこともあります。普段は東京からアクセスしているのに、突然ロンドンやニューヨークから接続しているように見えれば、銀行側が「アカウントが乗っ取られたのでは?」と警戒するのは当然です。

実際に私が経験したトラブル:

  • 銀行アプリ:ログインブロック→カスタマーサポートへの電話で本人確認が必要に
  • クレジットカード会社のサイト:一時的なアカウント凍結→解除に数時間
  • 証券会社のアプリ:取引が一時停止→セキュリティ質問への回答を要求される

これらの対応に費やした時間とストレスは、VPNの利便性を完全に上回りました。

ストリーミングサービスとの終わりなき戦い

動画ストリーミングは、VPNにとって特に厳しい戦場です。HuluやNetflix、YouTube TVなどのサービスは、ライセンス契約や地域別の広告収入を守るため、VPN接続を積極的に検出してブロックしています。

私がカナダ在住の友人と話していたとき、彼女は「バンクーバー旅行中に日本のNetflixコンテンツが見られなくなった」と嘆いていました。逆に、私が海外ドラマを見るためにVPN経由でアメリカのサーバーに接続したところ、「プロキシまたはVPNを使用しているようです。これらをオフにしてもう一度お試しください」というメッセージが表示されました。

VPNプロバイダー側もイタチごっこで対抗していますが、すべてのVPNがストリーミングサービスへのアクセスを保証できるわけではありません。実際、私が使っていたVPNでは、Huluには接続できましたが、BBC iPlayerはブロックされていました。

地域制限されたコンテンツにアクセスしたいなら、契約前に「このVPNは自分が使いたいサービスに対応しているか?」を入念に調べる必要があります。そして、今日使えても明日には使えなくなる可能性も常にあります。

その他の予期せぬトラブル

VPNが原因で起きた、その他の細かいトラブルもありました。

  • Google検索のCAPTCHA地獄:VPN経由だと「ロボットではありません」認証が頻繁に要求される
  • ECサイトの決済エラー:購入時に「お客様の地域からは購入できません」表示
  • アプリの位置情報サービスの誤作動:天気予報アプリが見知らぬ外国の天気を表示

これらは個別には小さな不便ですが、積み重なると「VPNをオフにした方が快適」という結論に至りました。

理由3:VPNは「魔法の盾」ではなかった

広告が強調する「完璧なセキュリティ」の誤解

VPNの広告を見ると、まるで「VPNさえあればオンラインは完璧に安全!」と言わんばかりです。確かに、VPNには以下のようなセキュリティ上のメリットがあります。

  • 本当のIPアドレスの隠蔽
  • 通信内容の暗号化
  • 公共Wi-Fi利用時の保護
  • 広告ブロックやマルウェア警告機能

しかし実際には、VPNは総合的なセキュリティ対策のワンピースに過ぎないんです。

VPN自体が攻撃対象になるリスク

意外かもしれませんが、VPN自体にもセキュリティリスクがあります。VPNプロバイダーのサーバーやソフトウェアに脆弱性があれば、攻撃者がそこを突いて盗聴する可能性もゼロではありません。

過去には、以下のような事例も報告されています。

  • VPNサービスのサーバー侵害による顧客データ流出
  • ソフトウェアの脆弱性を突いた中間者攻撃
  • 無料VPNによるユーザーデータの第三者販売

だからこそ、VPNプロバイダーを選ぶ際は「ノーログポリシー(通信記録を保存しない方針)」を採用しているか確認することが重要です。でもここで疑問が生まれます:「本当にログを取っていないと、どうやって証明できるの?」

本当に必要なのは「多層防御」

セキュリティの専門家たちが口を揃えて言うのは、「単一の対策に依存するな」ということです。私が現在実践している、VPNなしのセキュリティ対策はこちらです。

基本的な対策

  • Windows Defenderなどのローカルウイルス対策ソフト
  • すべてのアカウントで二要素認証(2FA)を有効化
  • 強力で一意なパスワードの使用(パスワードマネージャー活用)
  • OSとアプリケーションを常に最新版に更新

ブラウザレベルの対策

  • Chromeの組み込みフィッシング警告を活用
  • Privacy BadgerやuBlock Originなどの拡張機能でトラッキング防止
  • HTTPSサイトのみを利用(HTTPS Everywhereなど)

行動面での注意

  • 怪しいメール、SMS、電話には反応しない
  • 公共Wi-Fiでの重要な取引を避ける
  • 定期的にアカウントのセキュリティ設定を見直す

これらを組み合わせることで、VPNがなくても十分なレベルの安全性を確保できていると実感しています。もちろん、特定の状況(権威主義国家での通信、企業の機密情報へのリモートアクセスなど)ではVPNが不可欠なケースもありますが、一般的な個人利用では「絶対必須」とまでは言えません。

【中級者向け】VPNプロトコルの違いを知っていますか?

VPNには複数の通信プロトコルがあり、それぞれにセキュリティと速度のトレードオフがあります。

OpenVPN

  • 長所:オープンソースで透明性が高く、強力な暗号化
  • 短所:やや速度が遅い、設定が複雑

WireGuard

  • 長所:軽量で高速、モダンな暗号技術
  • 短所:比較的新しく、長期的な実績が少ない

IKEv2/IPsec

  • 長所:モバイル環境で接続が安定、再接続が速い
  • 短所:ファイアウォールでブロックされやすい

PPTP(旧式)

  • 長所:高速で設定が簡単
  • 短所:セキュリティが弱く現在は非推奨

もしVPNを使うなら、最低でもOpenVPNかWireGuardを選びましょう。PPTPは古すぎて危険です。また、「ダブルVPN」や「オニオンオーバーVPN」といった多段階接続は、セキュリティは高まりますが速度は大幅に低下します。自分の用途に合わせてプロトコルを選ぶことが、VPNを賢く使うコツです。

理由4:増え続けるサブスクに疲弊していた

サブスクリプション疲れの現実

「サブスクリプション経済」への移行は、テクノロジー業界における最大のトレンドの一つです。確かに、サブスク方式には以下のようなメリットがあります。

  • 高額な初期投資が不要(月々少額で最新サービスが使える)
  • 企業側の安定した収益で継続的なアップデート
  • 柔軟な契約(いつでも解約可能)

しかし、あらゆるサービスがサブスク化した結果、月々の支出が想像以上に膨らんでいることに気づきました。

私が実際に契約していたサブスクリプション(VPN解約前):

  • Netflix:約1,980円/月
  • Spotify Premium:約980円/月
  • iCloud+ (200GB):約400円/月
  • Adobe Creative Cloud:約6,480円/月
  • Microsoft 365:約1,490円/月
  • VPNサービス:約1,200円/月
  • その他(Amazon Prime、YouTube Premiumなど):約3,000円/月

合計:約15,530円/月(年間約186,360円)

これらすべてが「なくてはならない」わけではありません。でも、一度契約すると解約のハードルが心理的に高くなるんです。特にiCloudのように、「解約したら写真や動画のバックアップをどうしよう…」と人質に取られているような感覚になるサービスもあります。

VPNサブスクの価格を冷静に考える

無料VPNには前述のセキュリティリスクがあるため、使う価値のあるVPNは有料サブスクが前提です。主要なVPNサービスの価格帯を見てみましょう。

月額プランの場合(割引なし)

  • ExpressVPN:約1,800円
  • NordVPN:約1,700円
  • Surfshark:約1,600円
  • CyberGhost:約1,500円

年間プラン(1ヶ月あたり換算)

  • ExpressVPN:約900円
  • NordVPN:約500円
  • Surfshark:約400円
  • CyberGhost:約300円

※為替レート(1ドル=約150円)で換算した概算

一見すると「年間プランなら月々数百円だし安い」と感じるかもしれません。でも冷静に考えてみてください。年間約4,000〜10,000円を支払って、実際にどれだけの頻度でVPNを活用していますか?

私の場合、主な使用目的は以下の3つでした。

  1. 海外製品の調査(月に数回)
  2. 地域制限されたコンテンツへのアクセス(月に1〜2回)
  3. IPアドレスの隠蔽(頻度不明、効果も体感しづらい)

この使用頻度で年間約1万円は、コストパフォーマンスが良いとは言えませんでした。

「無料の代替手段」で十分だった

VPNを解約して気づいたのは、私のニーズの多くは無料または低コストの方法で満たせるということです。

IPアドレス隠蔽の代替

  • プライバシー重視のブラウザ拡張機能(無料)
  • Privacy Badgerなどのトラッキングブロッカー(無料)
  • Torブラウザ(完全無料、匿名性が極めて高い)

セキュリティ対策の代替

  • Windows Defender(OS標準搭載)
  • 二要素認証(ほとんどのサービスで無料)
  • 強力なパスワード管理(Bitwardenなど無料プランあり)

地域制限回避の現実 正直に言えば、これに関しては完璧な無料代替手段はありません。でも、私が「どうしても今すぐ見たい」と思うコンテンツは年に数回程度。その都度、短期的にVPNを契約(1ヶ月だけ)という選択肢もあります。

お金の使い道を見直す

サブスクリプションの整理は、単なる節約以上の意味がありました。「本当に自分の生活を豊かにしているサービスは何か?」を見つめ直すきっかけになったんです。

VPN解約で浮いた年間約1万円は、以下のような「使い切り」の投資に回せます。

  • 良質なセキュリティソフトの永久ライセンス
  • 技術書の購入(年間5〜10冊)
  • ハードウェアのアップグレード費用の一部
  • オンライン学習コースの受講

こうした「資産になる」支出の方が、毎月消えていくサブスク費用よりも価値があると感じています。

まとめ:VPNは「必要な人」だけが使うべきツール

私がVPNを解約した4つの理由(おさらい)

ここまで、実体験に基づいて以下の理由を詳しく解説してきました。

  1. オンラインゲームやリアルタイム通信との相性が最悪:ラグの増加は避けられず、ゲーマーやビデオ通話を頻繁に使う人には致命的
  2. 特定のアプリやサービスで予期せぬ問題が多発:銀行アプリのブロック、ストリーミングサービスとのイタチごっこなど
  3. セキュリティの「魔法の盾」ではなかった:多層防御が重要で、VPN単体では不十分。無料の代替手段も充実
  4. サブスク疲れと費用対効果の低さ:年間約1万円の価値を実感できず、他の用途に使った方が有意義

これらは決して「VPNが悪い」という話ではありません。自分のライフスタイルや使用状況において、VPNのメリットがデメリットを上回らなかったというのが正直なところです。

VPNが「本当に必要な人」とは?

逆に言えば、以下のような方にはVPNは依然として価値のあるツールです。

  • 海外在住で日本のコンテンツに頻繁にアクセスする人
  • ジャーナリストや活動家など、匿名性が職業上必須の人
  • 権威主義国家で検閲を回避する必要がある人
  • 企業のリモートワーカーで社内ネットワークへの安全なアクセスが必要な人
  • 公共Wi-Fiを日常的に使う機会が多い人
  • オンラインゲームをほとんどせず、リアルタイム通信も少ない人

もしあなたがこれらに当てはまるなら、VPNへの投資は十分に正当化できるでしょう。

契約前に自問すべき3つの質問

VPNサブスクリプションを検討している方に、私から3つの質問を投げかけたいと思います。

質問1:「具体的にどんな場面で、どのくらいの頻度でVPNを使う予定ですか?」 漠然と「セキュリティのため」ではなく、具体的な使用シーンをイメージしてください。月に数回程度なら、費用対効果を慎重に検討すべきです。

質問2:「VPNなしの代替手段を試しましたか?」 プライバシー保護なら拡張機能、セキュリティなら2FAとウイルス対策ソフト、コンテンツアクセスなら合法的なVODサービスの追加など、他の選択肢も検討してみてください。

質問3:「トライアル期間でゲーム、ビデオ通話、銀行アプリなどを実際に試しましたか?」 多くのVPNは返金保証期間があります。必ず実際の使用環境でテストし、不便がないか確認してから本契約しましょう。

最後に:テクノロジーは「使いこなす」もの

VPNに限らず、テクノロジーツールは「誰にでも必要」なものではありません。あなたのライフスタイル、価値観、予算に合ったツールを選ぶことが最も重要です。

私はVPNを解約しましたが、それは「VPNが悪い」からではなく、「今の自分には合わなかった」から。逆に、Spotify Premiumは毎日使うので解約する気は全くありません。

この記事が、VPNサブスクリプションを検討しているあなたにとって、冷静な判断材料になれば幸いです。広告やレビュー記事では語られない「リアルな使用体験」を知った上で、後悔のない選択をしてください。

そして何より、「みんなが使っているから」「広告で勧められたから」ではなく、**「自分にとって本当に必要か?」**という視点を忘れないでください。それこそが、賢いテクノロジーユーザーへの第一歩なのですから。